清藤士塾の渡辺です。
インターネット上の稼ぎ方として、サブスクリプションや広告収入がありますが、最も効率的で収益性の高いビジネスとは何なのか。大学の授業にそのヒントを見ます。
サブスクリプションと広告収入ではどちらが稼げるか
サブスクリプションとは定額制のことであり、月単位や年単位で一定額の料金を徴収するビジネスモデルです。一方、広告収入というビジネスモデルもあり、どちらも現在多くの個人や企業に使用されています。サブスクリプションとひとえに言っても、オンライン映画の視聴料や音楽コンテンツの配信料など色々な形態に利用されています。
サブスクリプションと広告収入では、どちらが収益率が高いかといえば、現在のビジネスでは、圧倒的にサブスクリプションのほうが収益率が高いと言えます。サブスクリプションの最たるものは大学の授業料であり、日本では私立大学で毎年100万円近い料金が課されています。
一方、広告収入の代表的なビジネスは検索エンジン最大手や動画配信SNSなどの配信コンテンツと言えます。広告収入は昔ながらのビジネスとしては、テレビや新聞などメディアの収益源として活用されることが多かったはずです。
新聞は、素晴らしいビジネスモデルであり、広告収入だけでなく、新聞紙自体の販売料も収益として加わります。テレビは、広告収入が大きな収益の柱であり、企業が広告費を支出しなければ、収入は大きく減少してしまいます。今回のコロナでは、緊急事態宣言など、テレビの取材自体が抑制されることも問題としては大きかったですが、広告費の減少が売上を大きく圧縮したことは否めません。
一方、インターネットでは、映画配信大手によるサブスクリプションが収益モデルとして利用されていましたが、サブスクリプション料を圧縮するため、映画に広告を挟むことによって、広告収入とサブスクリプションの二本立てで収益を獲得しようという試みがなされています。しかし、動画配信サービスのサブスクリプション料は、年額で1万円に届くかどうかという廉価なものであり、大学の授業料のような高額なサブスクリプション料を課す余地はないように見えます。
大学の授業料がなぜあれほど高額なのか。主要先進国の教育関連費を見れば、年額600兆円に達するほど、市場規模としては巨大なことがわかります。これは、政府の補助金も含めて一人あたりの教育費が年額200万円として3億人の学生が存在することが垣間見えます。現在でも存在するビジネスに年額数百万円もする高額なサブスクリプションは存在しないでしょう。いかに教育事業が収益性の高いビジネスモデルであるかがわかります。
大学の授業料が高い理由に、一流の研究者による対面またはオンラインでの授業、キャンパスのような学校設備の利用、何より就職に有利な学位の授与があります。一方、広告収入は検索エンジン大手や動画配信SNSの専売特許ではありますが、検索エンジン最大手企業の年間売上高が数兆円であることからも大学のサブスクリプションと検索エンジンの広告収入では資金量で大きな差があることが分かります。検索エンジンと教育事業でこのような差が生まれるのはなぜでしょうか。
検索エンジンが収益性で大学を超えられない理由
検索エンジンでサブスクリプションつまり利用に対して対価を得ようとするのは現時点では困難であると言えます。今まで検索エンジンの利用は無料とされてきたし、今更利用に対して対価を取るのは利用者が納得しないはずです。
また、検索大手はデータを売っていますが、それ以上に現物としてのメリットが少ないです。それに対して、高校や大学といった高等教育機関では、高校卒業資格や大卒資格といった認定証が卒業と同時に得られます。多くの学生は、この高等教育機関の卒業認定資格のために高額な授業料というサブスクリプションを自ら進んで払うことになります。この卒業認定資格は就職時や特定の業務に就く場合、保有していれば有利にそのポストを得ることができます。これは高卒と大卒の生涯賃金で有意な差がでることからも多くの教育利用者がまず簡単に思いつく賃金の増やし方でしょう。
そういう意味では、最近では一般的となったオンラインサロンというビジネスと何が違うのかということですが、サロンに参加するのは何か学ぶことなど実益があることが理由であるはずです。しかし、いくらオンラインサロンで学び稼ぐ力を身につけても、それを証明して労働市場で価値を高める手段がないのが実情です。
オンラインサロンで毎月5000円払う利用者が一定数いたとしても、有り余る金でもなければ、喜んで毎年100万円をサロンに払う顧客はほとんどいないでしょう。つまり、大学の授業とオンラインサロンの講義で違うことといえば、その学びが後の将来につながるかということです。
仮に、オンラインサロンで学んだあとに有名大手企業に楽に就職できるのであれば、高い授業料も喜んで払う人は確実に増えるでしょう。そういう意味では、オンラインサロン的なビジネスは高等教育の下位互換といえるビジネスであり、その教育を受けることによってある程度保証される特典が抜けています。これは、検索最大手がサブスクリプションとして成立するためにも検索して得られる知識以上に何か実物として得られるメリットが必要となります。
もちろん、サブスクリプション以外にも物販による商品の販売など稼ぐ機会は他にもあります。しかし、物を売るという古典的なビジネスモデルを差し置いて、有益なコンテンツの視聴だけで利益を得ようとすれば、広告収入よりサブスクリプションのほうが上手いビジネスの方法です。さらにサブスクリプションの利用後に学位などの利用者にとって明らかなメリットがあり、大金を払っても得たい何かがあれば、高額のサブスクリプションという高等教育に近いビジネスに発展させることができる可能性がある。
大学教育というのは言わば文化であり、企業活動と一連のシステムとして現代で定着してきた歴史があります。その企業努力といえる歴史を横において、高等教育の優劣を語ることはできませんが、高等教育と新規事業をミックスさせることで、高い授業料を得ることも可能なのです。
本記事のポイントとして学位のような特典があれば高額サブスクリプションも可能
文章メディアとして代表的なブログと、動画メディアとして代表的な動画配信SNSでは、どちらも主な収益源は広告収入です。動画配信として一歩進んだ収益モデルは、映画配信サービス大手のサブスクリプションです。このサブスクリプションは、ブログでもオンラインサロンとして人気講師の収益源となっています。しかし、どちらも収益としては単価が低く、薄利多売という欠点があります。
大学の授業料のように高品質なサブスクリプションとするためには、学位のようなお金を払っても欲しい実益が必要となります。しかし、大学の学位は文化的に企業活動と共に発展してきた特殊なものであり、オンラインサロン等で真似るのは困難であると言えます。オンラインサロンをさらに収益率の高いビジネスモデルにするためには、物販を同時に兼ねることも検討できますが、物販にも限度があることがわかります。
そのため、オンラインサロンや動画配信サービスがその利用のあとで受けられる恩恵、つまり高等教育であれば有利な就職などがあれば、高額なサブスクリプションを大勢の利用者に課すことも非現実的ではありません。
結局、今回の話のまとめは、広告収入でも低額サブスクリプションでも物販でもないメディアの稼ぎ方として、学位のような特典を授与することで高額なサブスクリプションが可能となるという点です。大学などの高等教育は至って高度なビジネスモデルでありますが、それを超える収益モデルもきっと存在するはずです。その収益モデルは、次世代の稼ぎ方として未開の巨大市場を想像させます。